2017.05.10
2013年11月に飯綱東高原にオープンした「小さな癒しの宿 sinra(しんら)」。畳敷きの小さな部屋がいくつもある築21年のペンションのリフォームをツチクラ住建が担当しました。
大切にしたのは「まずは自分の居心地のよさにこだわった空間にすること」というオーナー遠藤美代子さんの思いです。
そもそも遠藤さんがそれまで縁もゆかりも無かった飯綱町に移住し、ペンションの開業に至ったきっかけは、以前知らず知らずのうちに無理がたたって心身のバランスを崩し、その気持ちを安らげるため、1カ月ほど長野県の、とあるペンションで住み込みで働き、自然の中でゆっくりと過ごしたことにあります。
そのときに周りの人たちに支えられながら自然の力に無条件に癒された経験から、遠藤さんは長野県の自分に合う自然の中で「自分がやりたい事をやって楽しく幸せに生きること、そしてお世話になった方々に感謝の気持ちをお返しできる表現の場を創ること、それは忙しい日常の喧騒を離れゆったりと過ごしていただき、リラクゼーションセラピーを受けることが出来る大人の為の癒し宿」という思いに至り、長野県内で移住開業先を探すこととなりました。
そして、当時住んでいた石川県から広い長野県の中で自分に合う場所を探しに幾度となく車で訪れました。2012年11月、道に迷って偶然出会ったのが、横手直売所の『りんご祭り』でした。りんごが大好きだった遠藤さんは道に迷ったことも忘れて、迷わず飛び込んだそうです。すると、りんご農家さんが蜜が溢れるほど入ったサンふじを剥いて試食させてくれました。
「そのりんごの美味しさに感動したのを今でも鮮明に覚えています、生きる力が湧き出してくるように感じました」と話す遠藤さん。
そしてその6ヵ月後にあの日訪れた横手直売所の近くに空き物件を見つけ、飯綱町に運命を感じ移住を即決、宿を開業することとなりました。
「あの日偶然出会ったりんごがこの場所に導いてくれたのだとりんごに感謝しています」
遠藤さんは移住1年目に横手直売所近くの畑を借りるご縁がつながり、りんご農園も営むこととなりました。
「1人でも多くの人に飯綱町の美味しいりんごを味わって喜んでいただけるよう、りんごひとつひとつに思いを込めて日々大切に育てています」
飯綱町のりんごには凄い力が宿るのですね!
まず、大きく変えたのが2階です。遠藤さんは自分が無理をしないことや静かでゆったりと過ごせる空間づくりを重視していたため、たくさんあった部屋数を大きく削減。かつては20人ほどが泊まれる宿でしたが、最大10人3組までと決め、3部屋のみのこだわりの空間に改修しました。
一番大きな部屋は、2部屋だったものをひとつの部屋にリノベーション。壁の色や手触りは落ち着いたものにし、押入れ部分はクローゼットスペースにして、トイレと洗面を併設にしました。
畳敷きの部屋は、森羅テイストに。こちらも押入れ部分を改修し、部屋の一部として活用しています。ライトなどの細部もこだわり、どの部屋も落ち着く暖色系の光に。ダブルベッドの部屋は押入れ部分を撤去し室内へと空間活用しています。
トイレがたくさんあったのも、以前の建物の難点でした。そこで、2階のトイレはひとつに集約。
広くゆったりと使うことができます。ステンドグラスも遠藤さんが選んだものです。
また、1階にあるかつての住居スペースは、セラピールームに改修しました。こちらも2間続きだったものを広い1室に。ゆったりとした気分でセラピーを受けることができます。設えもすべて遠藤さんがこだわって選んだものばかり。
「sinraは本当に私自身の表現です。ツチクラ住建さんは『sinraはこういうコンセプトでこういうものをつくりたい』という私の要望に柔軟に一生懸命対応してくれて、本当にありがたかったです」と遠藤さんは話します。
さらに、遠藤さんが感謝するのは、短納期ながら真摯に取り組んでくれた職人たちと、ともに施工ができたこと。9月から改修に着手し、全員で力を合わせて2カ月で改修を仕上げたのです。
「オープン日の日にちを決めていたので、それまでに何とかしてくださいとお願いしました(笑)。職人さんたちは一生懸命に山の暮らしすら知らない私を助けてくださって、工事自体も一緒に関わりながらできたので、私としては本当にありがたく楽しかったです。最後は工事が終わるのが嫌になったくらい(笑)」
その後は、工事に関わった人たちと食事会を催したり、その方々が繋いでくださるご縁で多くの人々とも繋がっていき地域に馴染んでいきました。
大きく改修したほかの空間に比べ、ダイニングスペースは以前のものを生かし、もともとあったものを活用しています。廊下の床板なども以前のままです。
ただし、1階廊下の洗面所はもっともこだわった部分のひとつ。特に壁の設え(ニッチ)は、遠藤さんが一番気に入っている部分です。
寒さ対策としては、二重サッシや薪ストーブを取り入れています。薪の集め方やストーブの使い方は地域の人に教えてもらいました。
こうして、遠藤さんの想いをツチクラ住建が具現化し、古びたペンションは大人のための非日常を味わえる癒しの空間に生まれ変わりました。
最後に遠藤さんは「今後は何かのご縁に導かれ巡り合ったこの地の素晴らしい魅力を、この地で知り得た大切な人々と共に発信していきたい」と話していました。
店名:sinra(しんら)
住所:〒389-1226 長野県上水内郡飯綱町川上2755-400
TEL:026-219-3304
WEBSITE:http://sinra11.com/